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東京高等裁判所 平成4年(行ケ)172号 判決

東京都豊島区北大塚1丁目21番10号

原告

神谷稔

同訴訟代理人弁理士

菅野中

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官

麻生渡

同指定代理人

瀧廣往

唐沢勇吉

中村友之

長澤正夫

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

「特許庁が昭和63年審判第536号事件について平成4年6月22日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

2  被告

主文と同旨の判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和57年11月22日、名称を「太陽光線を直接利用した照明装置」とする発明(以下「本願発明」という。)について特許出願(昭和57年特許願第204951号)をし、昭和62年11月11日、拒絶査定を受けたので、昭和63年1月7日、審判の請求をし、昭和63年審判第536号事件として審理され、平成2年8月23日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があったので、同年11月15日、東京高等裁判所に対し、審決取消訴訟を提起し、平成2年(行ケ)第253号事件とて係属し、平成3年6月6日、審決取消しの判決があり、同判決は確定したが、平成4年6月22日、再び「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は、同年8月5日、原告に送達された。

2  本願発明の要旨

中空グローブを有し、太陽の運行に追尾して太陽光を受光し、光ケーブルを通して受光した太陽光を、日陰部分、建物などの照明を必要とする個所に導いて発光させる太陽光線を直接利用した照明装置であって、

中空グローブは、太陽光を伝送する光ケーブルの端部の発光面をグローブの立体的な発光源に変換する変換器であり、乱反射面を有し、

乱反射面は、光ケーブルの発光面から出光した光を乱反射させるとともにグローブ全面より出光させるものであり、

光ケーブルの発光面は、中空グローブの中空内に臨ませたものであることを特徴とする太陽光線を直接利用した照明装置(別紙図面1参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本願発明の要旨は、前項記載のとおりである。

(2)  昭和54年特許出願公開第111840号公報(以下「引用例」という。)には、

光ファイバー(3)の他端(5)を覆う、したがって中空と解されるカバー(10)を有し、常に太陽に向かうようにして太陽光を受光し、ケーブル状に束ねられた光ファイバーを通して受光した太陽光を屋内等の照明を必要とする位置(2)に導いて放光して照明を行う採光装置であって、カバー上部に位置させた光ファイバーの他端より出光した光をカバーより出光させる採光装置(別紙図面2参照)が記載されている。

本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、本願発明のグローブ、光ケーブル、光ケーブルの発光面、太陽光線を直接利用した照明装置は、各々、引用例記載の発明のカバー、束ねられた光ファイバー、束ねられた光ファイバーの他端、採光装置に相当する。

したがって、本願発明と引用例記載の発明とは、

中空グローブを有し、太陽の運行に追尾して太陽光を受光し、光ケーブルを通して受光した太陽光を、日陰部分、建物などの照明を必要とする個所に導いて発光させる太陽光線を直接利用した照明装置であって、

光ケーブルの発光面より出光した光をグローブより出光させたものであり、

光ケーブルの発光面は、中空グローブの中空内に臨ませたものである太陽光線を直接利用した照明装置、

である点で一致し、

本願発明はグローブが乱反射面を有し、発光面から出光した光がグローブ全面より出光し、発光面をグローブの立体的な発光源に変換するという構成を備えているのに対し、引用例記載の発明では、引用例の第1図、第2図で光がカバー全面より出光しているように描かれているが、明細書欄には明瞭に記載されておらず、前記の構成を備えているか否か明瞭ではない点、で相違する。

(3)  そこで前記相違点について検討する。

発光面を覆うグローブが乱反射面を有する場合には、発光面から出光した光は当然グローブ全面より出光するものと認められる。また、発光面をグローブの立体的な光源に変換するという構成は、発光面からの光がグローブ全面より出光するということを言い換えたにすぎない。

そして、一般に照明技術において、グローブ、フード等の照明器具で光を乱反射させるようにし、その結果光が拡散するようにすることは周知(必要ならば、昭和49年実用新案登録願第66875号(昭和50年実用新案出願公開第155115号公報)のマイクロフィルム、昭和56年実用新案登録願第23599号(昭和57年実用新案出願公開第136105号公報)のマイクロフィルム、昭和48年特許出願公開第9585号公報参照)であるので、引用例記載の発明においてカバーで乱反射を行わせるようにすること、その結果、引用例中に図示されているように、該光ファイバー他端から出光した光が拡散してカバー全面から出光する、換言すれば、光ファイバー他端をカバーの立体的な発光源に変換するようにすることは当業者が必要に応じて適宜になし得ることである。また、このような事項によって生ずる効果も前記周知の技術により当然に予測されるものであり、格別のものではない。

(4)  以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

4  審決の取消事由

審決の本願発明の要旨、引用例の記載事項及び周知事項の認定は認めるが、本願発明と引用例記載の発明との一致点の認定及び相違点に対する判断は争う。

審決は、引用例記載の発明の技術内容の認定を誤って本願発明と引用例記載の発明との一致点の認定及び相違点に対する判断を誤り、もって本願発明の進歩性を誤って否定したもので、違法であるから、取消しを免れない。

(1)  取消事由1-一致点認定の誤り

審決は、本願発明のグローブは引用例記載の発明のカバーに相当すると認定し、もって、両発明はともに「中空グローブを有する」等審決摘示の点において一致すると認定している。

しかし、本願発明のグローブは引用例記載の発明のカバーに相当するものではない。

「グローブ」とは「照明器具の一種、光源を全く囲むもの。ガラスで作ったものが多く、照明用としては普通、乳色ガラスを使って、まぶしさを防ぐ。色ガラスのグローブは、信号、標識などに使われる」(「改訂電気用語辞典」株式会社コロナ社発行)ものであるが、本願発明のグローブは、太陽光を伝送する光ケーブルの端部の発光面をグローブの立体的な発光源に変換する変換器としての機能を有するものである。

一方、引用例記載の発明においては、光ファイバー(3)の他端は、機能的にはそのままむき出しにしておいてもよいのであるが、美観上カバーを取り付けているだけのことである。カバーである以上、光ファイバーの他端を覆っていることには相違ないが、このカバーには、光ファイバーの出光端の面光源を立体的な光源に変換する機能は全くなく、変換器として利用する本願発明のグローブとは機能的に明らかに異なる。

したがって、審決が本願発明のグローブは引用例記載の発明のカバーに相当すると認定し、もって、両発明はともに「中空グローブを有する」等審決摘示の点において一致すると認定したことは誤りである。

(2)  取消事由2-相違点に対する判断の誤り

審決は、相違点に対する判断において、先ず、本願発明の発光面をグローブの立体的な光源に変換するという構成は、発光面からの光がグローブ全面により出光するということを言い換えたにすぎないと判断している。

しかし、光ファイバーで伝送されてきた太陽光は約45°の広がりをもって出光するものであり、発光面は点光源に近い面光源である。

本願発明のグローブは、この点光源に近い面光源のものを立体的な発光源に変換するものであり、その構成は、単に発光面からの光がグローブ全面により出光するということを言い換えたにすぎないものではない。

そして、審決は、一般に照明技術においてグローブ、フード等の照明器具で光を乱反射するようにすることが周知であることをもって、引用例記載の発明において、カバーで乱反射を行わせ、その結果該光ファイバー他端から出光した光が拡散してカバー全面から出光すること、換言すれば、光ファイバー他端をカバーの立体的な発光源に変換するようにすることは当業者が必要に応じて適宜になし得ることであると判断している。

しかし、グローブ等の照明器具で光を乱反射させることが周知であることは認めるが、それらは電球のような立体的な発光源を使用し、その他広い立体角の範囲に光を拡散させたものに関するものであり、本願発明のように点光源に近い面光源を立体的な発光源に変換する変換器としてグローブを使用するものではない。

なお、被告は、審決が周知例として挙げた昭和49年実用新案登録願第66875号(昭和50年実用新案出願公開第155115号)のマイクロフィルム(乙第1号証)に記載された考案においては、硝子繊維よりなる導光管からの光を乱反射させていると主張するが、この周知例には、「屋内において導光管の他端に接近して配置した凹レンズ4より乱反射フード5を経て屋内照明用に供する」(明細書2頁14行ないし16行)採光装置が記載されているものである(別紙図面3参照)。即ち、この採光技術は、導光管の他端より出光した光を凹レンズで拡散し、乱反射フード面で乱反射させるものであり、この考案において発光面からの光が乱反射フード全面より出光するのであれば、それは、フードが凹レンズで拡散した光を出光させているのであり、凹レンズが光ケーブルの端部の発光面を立体的な発光源に変換する変換器であって、フードは、眩しさを防ぐためのものにすぎないものである。

本願発明は、光ケーブルの発光面が点光源に近い面光源であるからこそ、これを立体的な発光源に変換する手段として乱反射面を有する中空グローブを選定使用したものである。したがって、電球を光源に使用する照明装置、あるいは拡散光を出射する照明装置において光を乱反射させるためにグローブが使用されることが周知であっても、このことから、引用例記載の発明のカバーに代えて、光ファイバー端部の点光源に近い面光源を立体的な発光源に変換するために変換器としての中空グローブを使用し、もって本願発明の構成を得ることを想到することは当業者にとって容易ではないものである。

したがって、審決の相違点に対する判断は誤りである。

第3  請求の原因に対する認否及び被告の主張

1  請求の原因1ないし3は認める。

2  同4は争う。審決の認定、判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。

(1)  取消事由1について

「グローブ」が原告主張の辞典において原告主張のように定義されていることは認める。

本願発明のグローブも引用例記載の発明のカバーもともに、その定義における「光源を全く囲むもの」に該当するものであることは明らかであり、したがって、審決が本願発明のグローブは引用例記載の発明のカバーに相当すると判断したことに誤りはない。

原告は、本願発明のグローブと引用例記載の発明のカバーとの機能の相違を挙げて審決の前記判断の誤り、ひいては一致点認定の誤りを主張するが、光ケーブル端部の発光面を立体的な光源に変換するか否かという原告の主張する機能の相違については、審決は本願発明と引用例記載の発明の相違点として認定しているものであり、一致点の認定においてはその点の機能を除いて認定しているのであるから、審決の一致点の認定に何ら誤りはない。

(2)  取消事由2について

先ず、原告は、審決が本願発明の発光面をグローブの立体的な光源に変換するという構成は発光面からの光がグローブ全面より出光するということを言い換えたにすぎないと判断したことの誤りを主張する。

しかし、発光面からの光が立体であるグローブの全面より出光するのでなければ発光面をグローブの立体的な光源に変換するということにはならず、本願明細書及び図面の記載からすると、「発光面をグローブの立体的な光源に変換する」という記載が「発光面からの光がグローブ全面より出光する」こと以外の事項を意味するものと解することはできない。

そして、原告は、本願発明のグローブは点光源に近い面光源であるからこそこれを立体的な光源に変換する変換器としてのグローブを用いるものであり、これは審決認定の電球のような立体的な光源についてグローブ、フード等の照明器具で乱反射させる周知例から容易に想到し得るものではない旨主張する。

しかし、周知例として挙げたものの一つである昭和49年実用新案登録願第66875号(昭和50年実用新案出願公開第155115号公報)のマイロクフィルム(乙第1号証)が硝子繊維よりなる導光管からの光を乱反射させる技術に関するものであるように、審決が認定した照明技術におけるグローブ、フード等の照明器具で乱反射させ、光を拡散させるという周知技術は、電球のような光源に限定されるものではない。

したがって、当業者が引用例記載の発明において前記周知技術を適用し、もって本願発明の構成を得ることを想到することは格別困難なものではない。

したがって、審決が相違点に対して示した判断に誤りはない。

第4  証拠関係

証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

第1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、同2(本願発明の要旨)及び同3(審決の理由の要点)は当事者間に争いがない。

第2  そこで原告主張の審決の取消事由について検討する。

1  成立に争いのない甲第2号証(特許願並びに添付の明細書及び図面)、甲第3号証の1(昭和63年2月4日付手続補正書)及び甲第3号証の2(平成3年10月31日付手続補正書)によれば、本願明細書には、本願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果として次のとおり記載されていることを認めることができる。

(1)  本願発明は、太陽光線を他のエネルギーに変換することなく直接利用して室内を自然光で照明するようにした照明装置に関するものであり(明細書1頁14行ないし16行)、太陽の運行に追尾して太陽光を受光し、光ケーブルを通して受光した太陽光を、日陰部分、建物などの照明を必要とする個所に導いて発光させる太陽光線を直接利用した照明装置を提供することを技術的課題(目的)とする(平成3年10月31日付手続補正書2頁3行ないし7行)。

(2)  本願発明は、前記の技術的課題を解決するために、その要旨とする構成(特許請求の範囲記載)を採用した(平成3年10月31日付手続補正書別紙)

(3)  本願発明によれば、太陽光線が全く照射しない日陰部分特に建物内の日照問題を解消でき、更に太陽エネルギーを電気エネルギーやその他のエネルギーに変換するときのような変換のためのエネルギー損失がなく、省資源時代に適い(明細書9頁16行ないし10頁5行)、しかも、発光端に集中した鋭い光線の照射が柔げられ、あたかも、各室内に一つずつの太陽があるかのごとくにグローブ全体を柔かに自然光で発光させ、日中の日照はもとより、日昇、日没の感覚もあわせて得ることができるという作用効果を奏する(昭和63年2月4日付手続補正書2頁16行ないし3頁2行)。

2  取消事由1について

原告は、本願発明のグローブは点光源に近い面光源を立体的な光源に変換する変換器であり、引用例記載の発明の単に美観上取り付けられるカバーとは異なるとして、審決の本願発明のグローブが引用例記載の発明のカバーに相当することを前提とした一致点の認定の誤りを主張する。

引用例に審決認定の技術的事項が記載されていること及び「グローブ」が原告主張の辞典において「照明器具の一種、光源を全く囲むもの.ガラスで作ったものが多く、照明用としては普通、乳色ガラスを使って、まぶしさを防ぐ.色ガラスのグローブは、信号、標識などに使われる」と説明されていることは当事者間に争いがない。

審決は、本願発明のグローブは引用例記載の発明のカバーに相当すると判断し、それを前提に一致点の認定を行っているが、一方、審決の理由の要点から明らかなとおり、審決は、本願発明は発光面をグローブの立体的な発光源に変換するという構成を備えているのに対し、引用例記載の発明はその構成を備えているか否か明確でない点を両発明の相違点として認定している。したがって、審決が本願発明のグローブは引用例記載の発明のカバーに相当すると判断したのは、それらのグローブやカバーが光ケーブルの端部の発光面を立体的な発光源に変換する変換器としての機能を有するか否かという点を除いた一般的な用途、機能の観点、即ち、それらが前記の「照明器具の一種で光源を全く囲むもの」であるか否かという観点で評価していることは明らかである。

そして、本願発明のグローブが光ケーブルの端部の発光面を囲むものであることは本願発明の要旨から明らかである。

また、成立に争いのない甲第4号証によれば、引用例の発明の詳細な説明の項に「上記ブラケット(7)及びブラケット(7)に取着される光ファイバー(3)の他端(5)はそのままむき出しにしていても良いが、美観上カバー(10)を取り付けるのが望ましい。」(2頁右下欄19行ないし3頁左上欄2行)と記載され、第2図にカバー(10)が光ファイバー(3)の他端(5)即ち光源を全て囲い、カバー(10)の全面から出光しているように描かれていることが認められる。

これによれば、本願発明のグローブも引用例記載の発明のカバーもともに光源を全て囲むものであるから、審決がその点を捉えて、本願発明のグローブは引用例記載の発明のカバーに相当すると判断したことに誤りはなく、したがってまた、これを前提とする審決の一致点の認定に誤りはない。

3  取消事由2について

次に、原告は、本願発明のグローブは単にその全面から出光させたにすぎないものではなく、点光源に近い面光源を立体的な光源に変換する変換器であるとして、審決の相違点に対する判断の誤りを主張する。

そこで、先ず、原告が主張する本願発明のグローブが点光源に近い面光源を立体的な光源に変換する変換器であるということの技術的意味について検討する。

成立に争いのない甲第5号証(株式会社サンフェィバージャパン作成の太陽光集光装置等に関するパンフレット)によれば、光ファイバーの端部の発光面からの出光の角度は約45°であることが認められる。

また、前掲甲第2号証によれば、本願明細書には、「分岐回路23で主回路から分岐させた光フアイバ17の末端には複数本の各光フアイバ17にそれぞれ融着した発光端子25を同一面内で突き合せて球面状に配列しこれをブロック化して放射状発光面を形成し、第3図及び第4図に示すようにその発光端子25のねじ部25aに中空のグローブ26をねじ込んで該グローブ26で発光面を覆って照明治具(「照明器具」の誤り。)となす。グローブ26の内面は球面状をしており、球面状の発光面から太陽光線を散光させて乱反射させ照明を行なう。」(7頁19行ないし8頁8行)と記載されていることが認められる。

これによれば、本願発明においてグローブが点光源に近い面光源を立体的な光源に変換するというのは、単に光ファイバーの端部から一定の範囲に出光される光をグローブにより乱反射させてグローブ全体から出光させるというものにすぎず、それ以外の技術的事項を意味するものではない。

一方、成立に争いのない乙第1号証によれば、審決が周知例の一つとして挙げた昭和49年実用新案登録願第66875号(昭和50年実用新案出願公開第155115号公報)のマイロクフイルムは、名称を「採光装置」(願書4行)とする考案に係るものであるが、明細書の考案の詳細な説明の項に「第2図は、その利用の一例としてビルの屋外の太陽照射光線を凸レンズ1により集光し、凹レンズ2で平行光線に変えて、建屋の天井および側壁等に配置せる硝子繊維よりなる導光管3の一端に入射させ、その導光管3により屋内に導き、屋内において導光管の他端に接近して配置した凹レンズ4より乱反射フード5を経て屋内照明用に供し得るようにする解説図である。図中、1、2、4のレンズは出来るだけ少ない導光管束でより高い効果をだすためのもので、もちろん3の導光管束のみでも採光は可能である。」(明細書2頁9行ないし19行)と記載されていることが認められる。

これによれば、この周知例においては、硝子繊維よりなる導光管束からの一定の範囲の出光、あるいはそれに凹レンズを用いて出光の範囲を拡大させたものを、フードにより乱反射させ、フード全体から出光させて屋内の照明を行う技術が開示されているものである。

したがって、電球のような立体的な光源ではなく、限定された範囲に出光する光源を乱反射するフード(グローブ)で覆い、フード全体から出光させて屋内の照明に供することは本件出願当時周知の技術であったということができる。

よって、引用例記載の発明において美観上取り付けるカバーを乱反射するカバー(グローブ)に代え、もって光ファイバーの端部から出光した光が拡散してカバー全体から出光するようにすることは、当業者が必要に応じて適宜になし得ることであると認められる。

したがって、審決が相違点に対して示した判断に誤りはない。

4  以上のとおり、原告の審決の取消事由の主張はいずれも理由がなく、審決に原告主張の違法はない。

第3  よって、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条の規定を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 成田喜達 裁判官 佐藤修市)

別紙図面1

〈省略〉

別紙図面2

〈省略〉

別紙図面3

〈省略〉

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